ウィキペディア図書館に朝日新聞クロスサーチと Web OYA-bunko を追加するようリクエストしてみた

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2023年6月、ウィキメディア財団が運営するデータベース集「ウィキペディア図書館」に、朝日新聞クロスサーチと、大宅壮一文庫の Web OYA-bunko を追加するようリクエストを送りました

大宅壮一文庫の書架。Wikimedia Commons [[File:The stacks at the Oya Soichi Library 14.jpg]] (Uraniwa, CC-BY-SA 4.0) https://commons.wikimedia.org/wiki/File:The_stacks_at_the_Oya_Soichi_Library_14.jpg

経緯

ウィキペディア図書館は、一定の条件をクリアしたウィキペディアンが活用できるデータベース集です。JSTORDe Gruyter など、著名なデータベースが多く収録されており、私もウィキペディアの編集に活用しています。

ウィキペディア図書館には、追加してほしいデータベースをリクエストできるページがあります。そこで、2023年6月に、朝日新聞クロスサーチと Web OYA-bunko のリクエストを送りました。

このリクエストには、他のウィキペディアンが賛成票を投じることができます。そのため、ウィキペディア上の井戸端ページや、私が運営する稲門ウィキペディアン会のツイッターなどでお知らせしました。

稲門ウィキペディアン会のツイート。ウェブアーカイブはこちら

ありがたいことに、リクエストに賛同し、SNSで発信してくれるウィキペディアンもいらっしゃいました。また、ベストセラー『独学大全』の著者である読書猿さんも、ツイッターで応援してくださいました。

ウィキペディアンの Takenari Higuchi さんによるツイート。ウェブアーカイブはこちら
ウィキペディアンの要塞騎士さんによるツイート。ウェブアーカイブはこちら
ベストセラー『独学大全』の著者である読書猿さんのツイート。ウェブアーカイブはこちら

朝日新聞クロスサーチ

朝日新聞クロスサーチは、朝日新聞アエラ週刊朝日の記事を検索できるデータベースで、ウィキペディアの編集に大変役立ちます。実際、私も下記のとおり活用しています。

また、ウィキペディアンの Takenari Higuchi さんも、朝日新聞クロスサーチの愛用者です。

ほかにもTakenari Higuchi は、大学データベースに収録されている新聞デジタルアーカイブを参考文献として活用していると述べた。たとえば [[本山原人]] のウィキペディア記事においては、朝日新聞のアーカイブである「朝日新聞クロスサーチ(旧『聞蔵Ⅱ』)」、毎日新聞の「毎索」、日本経済新聞の「日経テレコン」を利用しているとのことであった。

Eugene Ormandy ら「早稲田Wikipedianサークルと稲門ウィキペディアン会が、デジタルアーカイブについての勉強会を開催」『Diff』2022年9月4日。2023年6月25日アクセス。

より多くのウィキペディアンが、気軽に朝日新聞クロスサーチを活用できるようになれば、ウィキペディアは間違いなく発展するでしょう。記事の立項はもちろんのこと、加筆修正、出典付けにも大いに役立ちます。

なお、朝日新聞クロスサーチの使い方については、相模女子大学武庫川女子大学附属図書館が YouTube で解説しています。興味がある方はぜひご覧ください。

Web OYA-bunko

Web OYA-bunko は、雑誌専門図書館の大宅壮一文庫が運営するデータベースです。大宅壮一文庫の特徴としてよく指摘されるのは、大量の雑誌を所蔵していることですが、実は独自の検索システムも大きな魅力の1つです。大宅壮一文庫は、雑誌記事ごとに人力でキーワードを付与し、それをデータベースに反映しています。そのため、分野によっては、Web OYA-bunko は国立国会図書館サーチ以上の検索力を発揮するのです。

Web OYA-bunko で「名曲喫茶」「名曲喫茶 and ヴィオロン」といったキーワード検索を行った結果、国立国会図書館サーチでヒットしないような資料がいくつもヒットしたのだ。これらの資料のおかげで、筆者は [[名曲喫茶ヴィオロン]]、[[名曲喫茶クラシック]]、[[名曲喫茶ルネッサンス]] といったウィキペディア記事を作成することができた。なお、これらの記事は他のウィキペディア利用者たちからも評価され、メインページ新着記事に選出された。

Eugene Ormandy「雑誌専門図書館の大宅壮一文庫をウィキペディア記事の編集に活用する」『Diff』2022年12月13日。2023年6月25日アクセス。

私が Web OYA-bunko をウィキペディアに活用した記録は、下記のとおりウィキメディア財団のブログ Diff にまとめています。

また、私以外のウィキペディアンも、Web OYA-buko を愛用しています。まずは、[[蔵の街]] というウィキペディア記事を立項した Uraniwa さんへのインタビュー記事から引用します。

Eugene Ormandy

[[蔵の街]] の作成にあたって、色々なデータベースを活用してますね。

Uraniwa

はい。国立国会図書館デジタルコレクション、グーグルスカラー、新聞データベース、大宅壮一文庫の Web OYA-bunko、グーグルブックス、栃木市公式サイト、栃木図書館郷土資料室などを活用しました。

Eugene Ormandy「各種データベースをウィキペディアの編集に活用する」『Diff』2023年3月3日。2023年6月25日アクセス。
栃木県栃木市の蔵の街を形成する施設の一つ、とちぎ歌麿館。Wikimedia Commons [[File:Tochigi Utamaro Museum.jpg]] (Suikotei, CC-BY-SA 4.0) https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tochigi_Utamaro_Museum.jpg

また、[[蓬莱屋 (とんかつ店)]] というウィキペディア記事を立項した逃亡者さんも、Web OYA-bunko を活用しています。

私の場合は、国立国会図書館デジタルコレクショングーグルブックス大宅壮一文庫の Web OYA-bunko を活用しました。雑誌記事のデータベースである Web OYA-bunko で、蓬莱屋の記事がいくつかヒットした時は「これはいける!」と思いましたね。

Eugene Ormandy「【インタビュー】とんかつ屋のウィキペディア記事を編集する」『Diff』2023年6月1日。2023年6月25日アクセス。
蓬莱屋。Wikimedia Commons [[File:Tochigi Utamaro Museum.jpg]] (ivva, CC-BY-SA 2.0) https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Horaiya_49694397152_92a3f933e2_o.jpg

[[利用者:さえぼー]] としてウィキペディアで活動する、シェイクスピア研究者の北村紗衣さんも、『白水社の本棚』に寄稿したエッセイ「大宅壮一文庫でウィキペディアを書く」で、Web OYA-bunko の有用性を指摘しています。

検索データベースである Web OYA-bunko (有料) は見出しなどを詳細に登録しており、非常に使いやすい。また、国立国会図書館が作る雑誌記事索引に入っていない一般雑誌が含まれているのが強みだ。たとえば今回のエディタソンで私は [[マグノリアベーカリー] ] (ニューヨークに本店があるカップケーキが有名なベーカリーチェーン)の記事を書いたが、国立国会図書館が作っている雑誌記事索引のオンラインデータベースであるざっさくプラスで「マグノリアベーカリー」を検索すると一件も出てこない一方、Web OYA-bunko では十四件もヒットする。マグノリアベーカリーはテレビドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』に登場して世界中で知られるようになり、一時期表参道にも支店があった。報道記事の日付を見ると、『セックス・アンド・ザ・シティ』で取り上げられて人気が出た少し後と、日本に出店した前後に雑誌で多数の報道があったことがわかる。こういう流行りものは一般雑誌には記事が出るが、学術雑誌や論壇誌にはなかなか載らないし、そうした雑誌で言及されたとしても検索では引っかからないことが多い。Web OYA-bunko は調べ物をする人には強い味方だ。

北村紗衣「大宅壮一文庫でウィキペディアを書く」『白水社の本棚』2022年夏号、7ページ。
マグノリアベーカリー。Wikimedia Commons [[File:The Magnolia Bakery (869393359).jpg]] (Rob Young, CC-BY 2.0) https://commons.wikimedia.org/wiki/File:The_Magnolia_Bakery_(869393359).jpg

なお、大宅壮一文庫は YouTube で Web OYA-bunko の使い方を解説しています。是非ご覧ください。

推薦したいデータベースは他にもたくさん

推薦したいデータベースは、他にも山ほどあります。他の新聞のデータベースや、電子書籍サービスなど、あげればキリがありません。ただし、特に重要なデータベースにまずは集中しようと思い、泣く泣く2つにとどめました。今回のケースがうまくいけば、今後も色々とリクエストを送ってみようと思います。

まとめ

ウィキペディア図書館にリクエストを送った経緯についてまとめてみました。実現することを願っております。また、本稿が「ウィキペディアンからウィキメディア財団への要求」に関する参考資料の1つとして機能すれば幸いです。

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