2023年5月のウィキペディアを振り返る

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ウィキペディアンの Eugene Ormandy と Takenari Higuchi が、2023年5月のウィキペディアの動向を振り返るオンライン対談を行いました。なお、前月の対談は以下のとおりです。

Eugene Ormandy

稲門ウィキペディアン会のメンバー。編集分野はクラシック音楽の演奏家、喫茶店など。2023年5月の印象に残った音楽は、cero の “e o”

Takenari Higuchi

早稲田Wikipedianサークルのメンバー。編集分野はイスラーム、歴史、ポップカルチャーなど。2023年5月の印象に残った音楽は、Drain の “Living Proof”

2023年5月の気になったニュース

Takenari Higuchi

5月は Queering Wikipedia というイベントが印象に残りました。このイベントでは、Wikimedia Argentina が2022年に作成した “Wikipedia y las biografías de las personas LGBTT+”: una guía de reflexiones y herramientas de Wikimedia Argentina” が英語に翻訳されました。

(補足)6月には、Queering Wikipedia に関する記事が Diff に寄稿されています。

Eugene Ormandy

5月の気になったニュースは5つあります。

1つ目は、オーストラリアのクイーンズランド州立図書館ウィキペディアン・イン・レジデンスに就任した、ビアンカ・ヴァレンティーノさんについてです。ウィキペディアン・イン・レジデンスとは、図書館等に駐在するウィキペディアンのことです。ビアンカさんの就任は、オーストラリアの音楽についての記事を充実させるプロジェクト The Record: Australian Music On Wikipedia の一環とのことです。

2つ目は、2022年7月から12月にかけての Transparency Reportウィキメディア財団が公開したことですね。このレポートは、ウィキメディア財団に寄せられた “Requests for user information” や “Requests for content alteration and takedown” についてまとめられています。日本からの要請も数件あり、冷や汗が出ましたね。

3つ目は、ウィキメディア財団が、ロシアの検事総長と通信監督当局ロスコムナゾールを提訴したというニュースですね。特にウクライナ侵攻以降、ロシア政府はウィキメディア財団への批判を強めていますが、ウィキメディア財団の方から反撃したのは驚きました。詳細はまだ知らされていませんが、今後の動向に注目したいですね。

4つ目は、イボの踊りをアーカイブするプロジェクト AID Project に関する記事です。ウィキメディア・プロジェクトは「一次資料」としても機能するのだなと再認識しました。

5つ目は、Oleh Shostak さんのインタビューですね。インタビューにおける、翻訳に関する懸念は印象に残りました。

My only advice is to work independently – not to translate from other language editions, such as from the Russian-language Wikipedia. One of the problems of Ukrainian Wikipedia is when poor-quality articles are translated: without sources or with low-quality sources. Sometimes one gets the impression that even the translators themselves do not read them. It is better to look for and verify the information yourself.

2023年5月の編集活動

Takenari Higuchi

5月はあまり編集活動を行いませんでしたが、以前加筆した [[市立名古屋動物園]] が良質な記事に選出されました。意外にも、日本語版ウィキペディアの良質な記事における、唯一の動物園記事です。このような身近な事物に関するウィキペディア記事は充実させていきたいですね。動物園の記事と言うと「客寄せ」的な要素が目を引きますが、それよりも保全活動などの文化的、学術的要素についての記述を充実させようと意識しています。

ちなみに、名古屋市に現存する [[東山動植物園]] の記事を加筆しようと思いましたが、難易度が高いと考えて断念しました。動物園だけではなく、植物園のことも書かないといけませんからね。

Eugene Ormandy

5月は新着記事を1本、強化記事を1本、Diff の記事を14本作成しました。

新しく立項した記事は [[大王当て]] です。このウィキペディア記事を作成したきっかけは、日本経済新聞の記事「くじ見張るのは閻魔大王 青森・津軽特有「当物」駄菓子の伝統守る」です。

また、強化した記事は [[日暮里大火 (1925年)]] です。この記事は、東京都荒川区の日暮里図書館を訪問したことを機に加筆しました。

(補足)6月に入ってから、この2つの記事をどのように編集したかをまとめた Diff 記事を作成しました。

また、図書館訪問や書籍レビューといった、シリーズものの記事もいくつか作成しました。おかげさまで、荒川区の公共図書館は制覇できました。

他にも、ウィキペディアタウン士別の参加記録や、[[蔵の街]] を立項した Uraniwa さんへのインタビュー記事を作成しました。

また、4月に作成した記事「【対談】世界史を愛するウィキペディアン」が、英語とドイツ語に翻訳されました。ありがたいですね。

2023年5月の気になった記事

Eugene Ormandy

5月の印象に残った記事は [[原宿のファッション史]] です。日本語版ウィキペディアであまり充実していないファッション分野で、質の高い記事が生まれたのは喜ばしいですね。また、「〜の歴史」という、あまりオーソドックスではないフォーマットで記事を書き上げてしまう手腕にも感服しました。

Takenari Higuchi

私が印象に残ったのは、英語版ウィキペディア [[The Holocaust]] が良質な記事 (Good Article) に選出されたことですね。なお、この記事は2006年に良質な記事に選出されましたが、2007年に認定を取り消されました。その後、何度か良質な記事の選考に推薦されていましたが、今回ようやく良質な記事に再認定されました。このような、百科事典として重要な項目が整備されるのは、大変重要なことだと思います。

まとめ

2023年1月から始めた月例対談も、早いもので5回目です。2人が注目するトピックの傾向も、多少は明らかになってきたのではないかと思います。気になった方は、過去の対談記事もご覧くださいませ。

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